綾辻行人「私の本格ミステリ観」@京都大学未来フォーラム

 行ってきました。参加予約が500名で満席という盛況ぶり。
私の本格ミステリ観 -“新本格ムーヴメント”と京大推理小説(ミステリ)研究会-


 いろいろと興味深いお話が1時間ほど。そのあとは若干の質疑応答もあり。個人的なメモの一部を次に掲げておきますが,あくまで聴き取りに基づくメモに過ぎませんので,私の聴き間違いや誤解等々が必ず含まれていることに充分ご留意ください(もし,全体の内容を知りたいという方がいらっしゃれば,aboutに掲げているメールアドレスまでご連絡ください。)。

  • 京都大学推理小説研究会(京大ミステリ研)について
    • 京大ミステリ研において,1979年の暮れに発表した初めての犯人当て小説は,「Pの悲劇*1」という題名
    • その内容は,「11月祭開催中に,教育学部学舎で起こった殺人事件をえがいたもの」。犯人当て正解率は,90%以上だったということで,たいへんショックを受け,今でもトラウマになっているとのこと
      • なお,この小説について,本フォーラム司会の教育学研究科長から「教育学部のお宝として,原稿を寄贈いただければ」というお願いがなされたものの,綾辻氏からは「門外不出です」とのお答えが
    • 4回生のときに,体調を崩して留年を決意。これがひとつの運命の分かれ目に。留年することを決めたので,卒論の代わりとして,江戸川乱歩賞に「十角館の殺人 (講談社ノベルス)」の原型となった作品を応募(結果は落選)。そして,留年した5回生のときに,京大ミステリ研に入ってきたのが,法月綸太郎我孫子武丸。彼らの存在などから,いわば「ときわ荘」のような環境がうまれた
  • 本格とは
    • 百者百様の本格のユートピアがあっていいんじゃないかなと思う
    • 若気の至りで,「本格とは,結局,雰囲気だよ*2」という誤解を招く発言をしたこともある
    • 現時点での大きな網をかけた定義としては,「謎と,その論理的解明を主軸とする物語」だといえるのではないか。さらに,広い意味では,「トリッキーなプロットと,(なるべく伏線を張って)安易な後出しをしない努力を最後までし続けて書き下す小説」とも定義できるのではないか
    • コアなところでは,もっと言いたいこともあるし,エラリー・クイーンが理想型だとかあるけれども,この場では,とても言い尽くすことはできない


■参考として,綾辻氏が言及されていた書籍のいくつかを御紹介

*1:Pとは,pedagogy の頭文字。京大では教育学部の略号に,この P が用いられている。

*2:ロマン主義的な雰囲気がないと僕はいやだなー」といった趣旨とのこと。