法の規定に基づく指示・公表は,不利益処分であるか否か

 本日のパブリックコメント・カレンダーで取り上げた案件について。
パブリックコメント・カレンダー090531 - 【情トラ】附゛録゛


 次のような改正を行うにあたって意見を募集するものなのですが,少なからず疑義があるのではないかと思われるのでメモ。

  1. 法の規定に基づく指示・公表を,従来は,行政手続法に基づき定めた処分基準において,不利益処分として取り扱っていた
  2. しかし,近年の消費者保護の高まりから,法の違反に対してより機動的に対応することが要請されており,このような要請に対応するためには,指示・公表を審査基準等の不利益処分として取り扱わないこととすることが求められ,これによって,行政手続法上の弁明手続等を講じる必要がなくなることに伴い,より機動的な法執行を行うことが出来ると判断される
  3. よって,法の規定による規格不適合品販売禁止に係る指示及び法の規定による品質確認義務違反に係る指示を審査基準等から除外する改正を行う


 そもそも,処分性の有無の判断は,当該行為を規定する個別法の解釈により行われるものである。しかし,本件改正にかかる説明からすると,不利益処分に該当するか否かは,行政手続法上の処分基準において「不利益処分として取り扱う旨を定めているか否か」によることにならないか。
 すなわち,「法の規定に基づく指示・公表は,不利益処分であるか否か」として解釈し判断すべきところを,「法の規定に基づく指示・公表を,不利益処分として扱うか否か」として規定し判断しようとしているようにも考えられる。


 もっとも,今回の改正にあたっては,「平成6年9月13日総管第211号各省庁事務次官等あて総務事務次官通知『行政手続法の施行に当たって』」において,「行政庁の行為に従わない場合の最終担保措置が『その旨の公表』にとどまるものについては、原則として処分性を有しないものと解することが適当である」と,明らかにされていることがひとつの根拠とされている。

 それゆえ,そもそも本件指示・公表は,不利益処分ではなかったにもかかわらず,不利益処分として取り扱っていたにすぎないから,当該取扱いを変更することも可能であるとしているのであろう。


 しかし,たとえ近年の消費者保護の高まりがあり,法の違反に対してより機動的に対応することが要請されていたとしても,その対応が不利益処分と解釈されるのであれば,適正手続の要請から行政手続法上の弁明手続等を講じる必要があるはずである。

 そして,その不利益処分であるか否かの判断につき,個別具体的な解釈を行うことなく,単に上記通知の記載内容のみを根拠として,結論を導き出すことには少なからず問題がありうるといえるのではないだろうか*1

*1:といいつつ,私も揮発油等の品質の確保等に関する法律の規定に基づく指示・公表に関する個別具体的な検討を,現時点では何も行っていないまま本エントリーを掲げたわけですが。