指定管理者制度

以下は、神戸新聞の記事に即して、【情トラ】管理人のコメント。

【情トラ】 この地方自治法の改正後の条文は、第二百四十四条以下に。

    • <記事> 従来の「管理委託」とは異なり、利用許可や料金設定など、管理にかんする権限まで委任(代行)されるのが特徴だ。委託先についても、自治体が50%以上出資する法人や土地改良区などの公共団体、農協、生協、自治会といった公共的団体に限られていたが、指定管理者制度では株式会社や民間非営利団体NPO)も対象となる。

【情トラ】 この委託先については、従来までは公共団体や公共的団体に限られていたが、もっと具体的にいうと、社会福祉協議会、事業団、公社・公団のほか、(県が委託する場合は、市町村や)いわゆる行政の外郭団体が主だったのではないかと考えられる(この点については、後日きちんと確認する予定。)。
 例えば、A県において、○○記念館という公の施設を建設しようと考えた際に、何をするかといえば、○○記念基金という名のもと、A県が県内関係市町村の協力をあおいで出資を行い、財団法人を設立(もちろん、この財団法人設立の認可については、A県知事が認可者。)。そして、そこに人材も供給したうえで、毎年の運営資金についても当該財団に補助金を入れるという形で、ワルく言うと自作自演の方法です。

    • <記事> 指定管理者制度の第一の狙いは、現行よりも良いサービスを提供することだ。と同時に、コスト削減も大きな課題である。この二つを同時に実現するには、大胆な組織改革も必要だろう。事業を評価する手法についても、検討を急ぎたい。

【情トラ】 この「大胆な組織改革も必要」とは、外郭団体を潰すことも必要ということかな??

    • <記事> 施設を直営にするか、指定管理者にゆだねるのか。管理者には現行の委託先をそのまま指定するのか、新たに公募するのか。どのような方法・基準で選ぶのか。これら詳細については、地方自治体の裁量に任されている。住民の期待や疑問にこたえられるよう、透明性を確保する必要がある。

【情トラ】 「現行の委託先をそのまま指定するのか」とあるが、本当にそれが可能であるのかは疑問。東京の江東区では、指定管理者制度を導入した保育園のうち、2つについては、公募によらずこれまで委託してきた「社会福祉法人」に「代行」させることを決めたそうですが、果たしてそれで公平性が担保されたといえるのか。その理由付けがはっきりしない限りは、公募しないと入口で制限されてしまうと応募しようと考えていたものが争う場が全くないだけに問題があるのではないか。
 また、透明性の確保には、議会の役割というものが非常に重要視されると思われる。まず公の施設の設置条例制定時、そして指定管理者選定時にそれぞれ議会の議決が必要になることになったため、ほとんど関与できなかった従前と比べ、たいへん比重が高まったと考えられる。


■【情トラ】管理人(一応の)まとめ
 この『指定管理者』制度導入に関しては、ネットで検索をかけると次のような論点がみられます。つまりは、「企業にビジネスチャンスを供する規制緩和、公務の市場開放の一環」であり、「利潤を追求することを旨とする株式会社に、公の施設の管理・運営を委ねていくことは、住民の諸権利の保障や自治体の公的責任の後退につながると懸念され」る、という論点です。
 しかし、この制度導入がホントウに「企業にビジネスチャンスを供する」ものであり「自治体の公的責任の後退につながる」ものなのでしょうか?
 【情トラ】管理人が、この制度の概要を知ったとき、最初に思ったことは、あぁ、「NPOが事業を行うにあたり、ものすごく意味がある制度ができたなー」ということです。
 確かに、もともと税金でつくった施設で、一企業が「利益」を得ることができる制度ととらえれば、企業に「ビジネスチャンスを供する」ものだと考えることもできるかもしれません。また、公の仕事は自治体が行うものだと考えれば、「自治体の公的責任の後退につながる」のかもしれません。
 しかし、公の施設とは、「住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設」であり、利用するのは住民なのですから、その住民が組織するNPOが出てきたときに、一企業が対抗できるようなものになるのでしょうか。NPOが指定管理者となると、それこそ利用する主体が運営するわけですから、住民の福祉を増進すること間違いありません。その意味で、指定管理者制度は、企業に「ビジネスチャンスを供する」ものではなく、NPOに「チャンスを供する」ものだと考えるのです。
 そして、行政を「お上」にしてそれが公共だと思っている勘違いがあるのではないでしょうか。何も自治体がやることが公共だということはありません。意地の悪い言い方をすれば、外郭団体をつくって自らの仕事の場を増やすことは、公共でもなんでもなく、単なる私的利益の追求にすぎません。公共を担うのは何も行政だけではなくて、行政はその一部を担っており、そしてNPOセクターも公共の一部を担うという考えが現在求められているわけです。そう考えると、「公的責任の後退につながる」ことは何もなく、NPOがその責任の一部を担うだけなのだと思うわけです。
 というわけで、NPOに関わっているみなさん、NPOに関わりたい、関わろうかな、とおもっているみなさん。指定管理者制度は最も今検討しないといけない課題ですよっ。最初の導入のときに、きちんとした計画を提出して指定管理者に選定されないと、次回の選定はまた、5年後とかになるはずです。ものすごく大きなチャンスが、NPOに与えられたと考えて、まずは各自治体に問い合わせることから行動しましょー!! (【情トラ】管理人も何か力になれることがあれば、ご協力したいと思います。)

 ※以上は、大いに主観的なまとめとなっていますので、そのことを踏まえたうえで、読んでいただけると幸いです。



神戸新聞4月19日付
http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu04/0419ja25400.html

指定管理者制度/業者選びの能力問われる

 昨年六月の地方自治法改正により、公の施設の管理運営について、地方自治体が直接行うもの以外は「指定管理者制度」を導入することが義務づけられた。

 従来の「管理委託」とは異なり、利用許可や料金設定など、管理にかんする権限まで委任(代行)されるのが特徴だ。委託先についても、自治体が50%以上出資する法人や土地改良区などの公共団体、農協、生協、自治会といった公共的団体に限られていたが、指定管理者制度では株式会社や民間非営利団体NPO)も対象となる。

 小泉政権構造改革路線の中で出てきた政策で、自治体財政が厳しさを増す中、赤字に陥りがちな施設の運営に、民間の力を借りようとするものだ。対象施設は、公立の保育所や病院、文化・スポーツ施設、駐車場、地区センターなど、市民生活にかかわりが深いものが多い。また、道路や河川、公営住宅の管理にも適用される。

 「お役所仕事」から脱して、住民や利用者へのサービスが充実する、と期待する声がある。その一方で、赤字部門の切り捨てにつながる懸念も残る。業者を選定する能力が、厳しく問われることになる。

 〇六年九月までは経過措置期間のため、まだ同制度への対応は鈍いが、やり方次第でもろ刃の剣となるだけに、各地の動向を注意深く見守りたい。

 兵庫県内では、尼崎や伊丹、篠山の各市、播磨町などで、生涯学習センターや運動公園などに指定管理者制度を導入した。兵庫県も先月、指定手続きや管理基準、業務の範囲を定める条例を制定している。

 また、神戸市では個別施設の検討に入る前に、市としての「運用指針」を策定した。指定管理者を原則公募することや、外部有識者を入れた選定委員会を局ごとに設置すること、さらに直営施設も含めたすべての公の施設について、同制度への移行を視野に入れながら管理運営のチェックを行うことを明らかにしている。

 指定管理者制度の第一の狙いは、現行よりも良いサービスを提供することだ。と同時に、コスト削減も大きな課題である。この二つを同時に実現するには、大胆な組織改革も必要だろう。事業を評価する手法についても、検討を急ぎたい。

 施設を直営にするか、指定管理者にゆだねるのか。管理者には現行の委託先をそのまま指定するのか、新たに公募するのか。どのような方法・基準で選ぶのか。これら詳細については、地方自治体の裁量に任されている。住民の期待や疑問にこたえられるよう、透明性を確保する必要がある。