市民裁判員先行記第35回/裁判員制度実施と新しい刑事裁判@法科大学院連続講演会第3回
連続講演会第3回目。1回目は参加し、2回目は他のシンポジウムと重なっていたので出席できなかったのですけど、本日は、津田賛平 京都地検検事正のお話を伺いました。
「実施に向けた検察の準備を中心に」という副題がついた講演内容であり、裁判員制度への準備に関するお話だったこともあって、非常にわかりやすく、また、たいへん参考になる講演だったのですけど、そのなかでも特に印象に残ったものの幾つかを簡単に掲げておくことに。
※なお、あくまで、以下は【情トラ】が聴いて個人的に理解した限りでのメモに過ぎません。実際には、おっしゃられなかったコトを私が勝手に補ってまとめたところが必ずあるはずです。その旨、必ずご留意くださいますようお願いします。
- 刑事裁判の実務がどうかわるか
- 迅速な裁判へ
- わかりやすい裁判へ
- 従来との違いは何か
- 書証中心から直接主義・口頭主義へ
- 従来から行われている裁判は、傍聴に行っても半分も理解できないのではないか。裁判官などは、書証を読みながら聴いているからこそ、理解できているような状態である。これを裁判員だけではなく傍聴人にもわかるように、公判の場において直接・口頭で理解できるようにする必要がある。
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- 証人尋問
- 従来から行われている証人尋問は、供述調書を最初から最後まで、争点にはならないと思われるものですら、公判の場で再現するものである。これを、たとえば争点に関係ないものは、誘導尋問することなどにより、争点となる部分とそうではない部分のメリハリをつけなければならない。
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- 証拠の厳選
- 従来から、捜査の結果としての証拠は、その重要度に関わらず、できるだけ提出するものとされてきた。しかし、その何でもかんでも提出するという姿勢はあらためて、争点に関連するところの証拠を厳選して提出する必要がある。
- 冒頭陳述の構成がどうかわるか
- 従来の冒頭陳述の構成
- 被告人の身上経歴等
- 犯行に至る経緯
- 犯行状況等
- 犯行後の状況及び被害状況
- つまり、時系列にそって物語風に行うのが、今までの冒頭陳述のあり方であった。そのため、たとえば、「陳述中に何かしらの事実がでてきたとしても、それが一体どのような意味をもつのかがわからないままに陳述がすすめられ、かなり後になってから、当該事実が何を意味していたのかがわかる」といったことも往々にしてあった。
- 従来の冒頭陳述の構成
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- 今後の試案
- 公訴事実(公判の核となる事実について)
- 本件の概要(適切な内容を簡潔に)
- 争点(公判前整理手続をふまえて)
- 立証方法(それぞれの争点について)
- つまり、公判前整理手続により争点をしぼったうえで、事件の核となる箇所から理解してもらい、同心円を描くように、徐々に詳細説明を行っていくというあり方である。
- 今後の試案
この他様々な説明等をお話いただいたのですが、本日の講演自体が、核となる箇所からお話いただき、同心円を描くように、詳細説明もしてもらったという印象を受けた次第です。
なお、講演後、質疑応答の時間がありましたので、【情トラ】も質問をさせていただきました。そのひとつが、次のようなもの。
- 質問として
- 証拠の厳選ということを説明いただいたが、「(1)今までどおり捜査においては、何でもかんでも手がかりになるようなものは全て収集し、そのうえで検察官が証拠を厳選する」ということになるのか、それとも、「(2)捜査の段階から、証拠は厳選して収集する」ということとするのか。
- 回答として*1
- 捜査は流動的なものであって、たとえ無駄になったとしても、広く収集するのが証拠である。重要なものである(重要なものとなる)のか、重要ではない(重要ではなくなる)のか、については、その時点その時点では全くわからない。
- その意味では無駄が多いともいえなくもないが、そうした捜査の在り方はかえる必要もないし、かえられないだろう。あくまで厳選するのは、証拠が集まってからの作業であると考えている。
現在、ボチボチと公判前整理手続に付された事件がでてきているそうで(※京都地裁において現時点で3件あるとのこと)、まずは、これらの事件の冒頭陳述及び証人尋問等が、どのように変化するのか(しないのか)、非常に関心があるところ。いつ公判が開かれるのかがわかるのであれば、傍聴に行ってみようかと思案中。
*1:この回答は、【情トラ】が理解した限りでまとめたものですので、その旨ご注意ください。