法政策分析/政策主体としての司法−政策志向型訴訟

<個人的memo>

  • (1) 従来からの裁判のイメージは、次のようなものである。
  • 法的思考型裁判(伝統型訴訟)
    1. 二当事者性
    2. 過去指向性
    3. 無裁量性
  • (2) しかし、「公権力機関が市民の社会経済生活に広く配慮・介入し、社会経済関係の集団化・組織化が進んでいるという現代的状況のもとでは、個々人の具体的な権利・利益の救済や実現は、公共的な政策の在り方や利益配分状況と不可分にからみあっている。しかも、弱者や少数者のこの種の権利・利益の主張が、立法・行政レベルの政策形成過程や私的紛争解決過程で公正な配慮を受けることは、ますます困難となっている(田中『現代社会と裁判―民事訴訟の位置と役割 (法哲学叢書)』p.169)」ことから、政策形成の場としての裁判という新しいイメージが生じた。
  • (3) この政策形成の場としての裁判のイメージは、次のようなものである。
  • 政策的思考型裁判(現代型訴訟)
    1. 多当事者性
    2. 未来指向性
    3. 有裁量性
  • (4) ただし、「裁判の固有の機能は、当事者主義的手続への公正な参加保障のもとで、正確に認定した事実に法を適正に適用し、当事者間の具体的な権利義務関係を明確に確定することによって紛争を解決すること(同上p.209)」であり、また、「現代型訴訟との関連で直接問題になっている機能が、ほとんど補充的・代償的機能であり(中略)、立法・行政レベルの政策形成過程に社会各層の要求や意見が公正にくみ上げられていない場合などに、大抵はやむをえず最後の手段として裁判に期待されている役割であることを忘れてはならない(同上p.210)」。
  • (5) そこで、立法・行政レベルの政策形成過程に社会各層の要求や意見が公正にくみ上げられることが、現在において要請されているところであり、その一例として、パブリックコメント手続があげられるのではないか。 要するに、次のようなことがいえるのではないか(同上p.198を参考にした)。
    1. パブリックコメントという公的な場が設けられること」、
    2. 「関係当事者が公正な手続保障のもとで理性的な議論に参加すること」によって、
    3. 「それぞれの主張の正当性を広く社会一般の正義・衡平感覚に訴えて社会的コンセンサスの拡大・強化をはかりつつ」、
    4. 「より正当で、かつ、公平な政策形成を目指すという『相互主体的な意識と行動』が必要とされている」