法政策分析/政策主体としての司法−司法積極主義と司法消極主義

<個人的memo>

  • 司法消極主義/司法積極主義とは
    1. 司法消極主義とは、「立法府・行政府という政策決定者の決断は最大限度の『謙譲と敬意』をもって扱うべきだとする立場」(新井『講座 憲法訴訟〈第3巻〉』p.189)
    2. 司法積極主義とは、「政策決定者の決断に積極的に介入し、憲法の趣旨を貫徹させようとする立場」(同上)
    • なお、この区別は何も憲法判断に限られるものではなく、行政事件における請求認容又は棄却若しくは却下や、そもそも司法の場に訴えやすいかどうかといった側面も有する。
  • それぞれの背景
    1. 司法消極主義は、「立憲民主主義における民主主義の側面を重視して、主権者たる国民を最もよく代表する議会こそが、人権をはじめとする憲法的価値を実現するに最も適合した機関であるから(中略)、議会が自ら明白な誤りを犯したと思われるときを除いて、違憲立法審査権を行使すべきではない」(同上p.204)とする。
    2. 司法積極主義は、「立憲民主主義における立憲制の側面に高い評価を与えて、多数決による議会の決定をもってしても制限・侵害しえぬ『高次の』憲法的価値が存在することを承認し、しかも憲法はかかる憲法的諸価値の実現ないし保障の任務を裁判所に与えたのであるから、裁判所は必要と思われる場合に違憲審査権の行使をためらうべきではない」(同上)とする。
    • ただし、「法の解釈は客観的な『確認』の作業ではなく、いわば解釈者の主観的な『創造』の営みであることは否定すべくもない事実」である。
    • それゆえ、「司法について、かかる機能になんらかの限界や制約ありとすべきか、この機能を手ばなしで肯定してよいかということが、論争点となる」(同上pp.206-207参照)ということができる。
    • なお、「消極か積極かを二者択一的に考えるのではなく、それぞれの国の統治体制のもとで、裁判所の判断を優越させることが妥当なのはどのような場合かを考察することによって決せられるべき」(同上p.214)と考えられる。
  • 日本の憲法裁判において
    • 法令違憲判決がだされたのは、数えるほどであり、司法消極主義であると評価されるところである。
    • この理由は、裁判官人事が大きな要因であるとの見解もある(同上p.220-221)。
    • または、「訴訟外的な効果の持つ比重が意外に大きく(中略)、これがあるがために存外、裁判所は司法消極主義に徹し得ているのかもしれない」(奥平康弘『憲法裁判の可能性』p.136)。
    • その他「最高裁裁判官が、なぜか傍論となるととても積極的で、あるべき立法政策をはなはだ雄弁に語り行政措置の是正を要請する向きがある」(同上p.152)ことも注目に値しよう。